縁側のガラス戸を開けると、甘い花の香りが漂ってくる。
30mは離れているだろうか、あるかなしかの南風に乗っている。
エゴノキだ。
小枝の先端に房状の白い花を来いっぱいにつけているから、遠目にもすぐに見つけることが出来る。
芳香は、かつて石鹸の木と呼ばれたということを思わせる。
子どもの頃、落ちた花を水の中で揉むと、石鹸のような白い泡が出た。
誘われて、花の下に入る。
全身で、この甘い香りをかいでいる。浴びている。
何のいわれもないが、この木の下で酒もいいと思いついた。
いすを出してきて、ビールをやる。旨い。