夏の残り

 
 秋の雨の時期から逃れられずにいる。

 束の間の晴れ間に、千日紅が赤を生き返らせた。
 薄紅の木槿が、じっと枝から落ちないようにしがみついている。


 日が差した瞬間、ツクヅクボウシが鳴き出した。
 そして短く、あちこちに連鎖した。

  イメージ 1

 残った夏の一瞬だった。
        もう既に残暑の時期も過ぎたが、「残夏」という
       言葉もあり、同じ頃を指すものだ。

 「つくづく惜(お)し」とか、「つくづく憂(う)し(つらい)」とか、聞こえる。
 古くは、「筑紫恋し、筑紫恋し」と聞く人も、「美し、佳し」と聞いた人もあったという。
                            イメージ 2  
 音を写し取るだけの鳴き声も、古は言葉として聞いていた。    
 自然と対話する中で、自らを見つめ直していたのか。