桜を待っているうちに、渡辺淳一を読もうという気持ちが募った。
季節とともに、心が春に向かっている証拠だ。この間、『熟年革命』を読んだせいでもあるのだろうか。
桜を描いた作品も少なくないし、もう新しい作品を望めなくなり、ずっと手に入らないものがあった。そして今、古本で手許にある。
亡くなって、もう4年。再版もあるのだろうが、短編集で、
「朝日文庫」だからか手に入らなかった。
集められた短篇8編は、69~98年(氏36~65歳)
に書かれた恋愛小説だ
女性の愛や死、深層の心理に潜む闇や微妙な揺ら
ぎを描き、理性や常識で説明しがたい意識と行動を
追った作品集だ。恋愛ミステリー的要素を交えたの
が特徴という評もある。
ラディゲや川端康成の名が随筆にあったと淡い記
ども女性も、可愛くて美しかった。
男の私にとっては、別れの儚さに身の置き場を失った。
おまけがあった。起こるはずのない偶然。
前読者の食事のレシート。作品と重なる。
染井吉野は見逃す。
君と一緒に観るのは、江戸彼岸や枝垂れ桜だ。