午後になって気温が上がった。
まだ蕾の向こうの晴れた空に、半分を過ぎた月が昇っている。
その月に向かって、山に入った。
迎えてくれたのは迎えてくれたのは蝶。ルリタテハ。
君らも、この暖かさに浮かれ出ているのか。
もう、ハチと競って、樹の汁を吸っている。
そのクヌギのもとで、シュンランが顔を見せた。
おひたしでも、酢の物でも、いいんだ。
さらに奥へ。
あった。カタクリ。
薄紫が視界いっぱいに広がっている。見事だ。
雑事の暮らしを忘れさせる、うららかさだ。
その向こうに、まだ春の花がありそうだ。