本を読む。
読めない漢字に出合う。どこまで読んだか、どういう言い方がよかったか、人物がどう変わったか、などという箇所に付箋を挟む。
しおり(栞)だ。
栞は枝折しおりで、山で枝を折って道標にしたというのがもともとらしい。
西行に、この「枝折」を詠み込んだ和歌がある。
吉野山去年こぞの枝折の道かえて
まだ見ぬかたの花を尋ねむ (新古今86)
吉野の桜の見事さに魅了され、来年もまたここへ来ようと思って、帰りの道に枝折りしておいたのだ。ところが翌年再び吉野を訪ねたとき、その道標を行かず、まだ通ったことのない別の道を行くことにしたというのだ。
「枝折」の道を行かず、より美しい桜を求めて止まな
い心なのか。
それは不安と失敗との背中合せかもしれない。まだ見ぬ花
を尋ねる方が、面白いに違いない。