「飛行機で眠るのは難しい」


 「飛行機で眠るのは難しい」(小川洋子著 『まぶた』新潮文庫収録)を
読まなければならなかった。
 高校現代文B(東京書籍)の教科書に掲載されていて、当校のシラバスに確固たる時間を確保しているからだ。


  小川洋子の作品は、読んだことがなかった。イメージ 1
  鴎外や芥川よりは易しいだろうと、読ませることにし
 た。そして詳しい説明を省き、多くの質問をして読解の
 学習にすることを極力避けることにした。
  17,8歳の高校生には、少なくとも戦後50年代あたりま
 では、古典で理解しがたい壁があるようだ。

 
  「飛行機で眠るのは難しい。そう思いませんか、お嬢さん。」
 飛行機で隣の席になった男に、「その人固有の眠りの物語」があると話しかけられるところに始まる。何かに触れるとその品物もまた小さく見えてしまうという不思議な老女とのエピーソード。

   老婆は三十年も文通していた日本のペンフレンドの墓参りをした
  帰りだった。実際訪れてみると、手紙の中味は見栄だったらしい。
   その間の自らの暮らしも話ながら、隣で食物アレルギーによる発
  作で亡くなる。

   男の話は完全に終わって、二人は眠りに着く。私は話に出たヤモ
  リを思い浮かべる。私の手の中には小さな死の塊があった。その塊
  が私を眠りへと誘った。


 老婆の話を聞き終えたとき、私は空港に着いたら恋人に電話しようと考えた。そして、老婆の店を訪ねる。
 ―なぜ。読み手たちに、応えを求めない質問を一つだけして終えた。