地方でも郊外で用事が済むようになっていて、昔ながらのところを訪
ねる時だけ街中を歩く。
賑やかさを減らしつつある通りを行く。
その街角で、小さな花束を持った女性とすれ違った。
花は、ストック(あらせいとう)だった。
柔らかい香りは、冷えた空気のせいか、覚えていたその花のものか、
あるいは女性のものだったか ・・・。
ストックは、春を告げる花だ。
だから、温室育ちの切り花ではあるが、初花だ。
ストックは、あの女性の側で優しい香りを広げていることだろう。