向田邦子ふたたび



 向田邦子のドラマを見た。「あ・うん」


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 「あ、うん」の呼吸で神社に佇む狛犬のように固い友情で結ばれた二人の男、その狭間で揺れる妻のときめきと哀切 …とくくられるが。

 夫の不倫の陰で嫉妬に耐える妻役に樋口可南子が、いかにも昭和らしい景色の中できれいだった。

 そんなことを最初に感じるほど、映像からくる印象に負けていたし、ちょっと甘さの平成にどっぷり浸かって来たからか。
 

                                       
イメージ 2   澤地久枝さんが、こんなことを言っていた。

   向田さんの作品の中には、非常に美しい、昭和の
  ちゃんとした人たちが使っていたことばが残ってい
  ますね。それから家族関係がね、ことばに出して言
  わないけど、実に細やかですね。
    私、今でも読んでいて、ああ向田さん、あなたはこんなに
   新鮮ないいことばを使うのねって、今、私はやきもち焼ける
   ぐらいに思いますね。
    それは、今の若い人たちも、私は通じていると思うのね。
    まず、その人生のうえでのかげりというものをね、あるん
   じゃないかなと、私は思ってるんですね。


 向田の作品は、『父の詫び状』から始まって、『眠る盃』、『隣りの女』…『蛇蠍のごとく』と読んできた。
 亡くなってもう36年、邦子像の新たな発見と魅力の再認識だった。
 
                                               あと何作かやるらしい。楽しみだ。