雨は来なかったわりには、蒸し暑さを感じる宵だ。
22℃もある。
日中も、すっきりと晴れもせず、暑い雨雲に押しつぶされていた。
家の中も、外も、同じ湿ったままの空気だ。
こんな夜にはきっと、ほたるが出る。
日没から1時間半、こんな蒸し暑い夜なら、ほたるは一夜に三度湧くだろう。
外に出る。真っ暗。 ― 絶好の闇だ。
枝垂れ桜の高いところで、微かに光った。
点滅を繰り返しているのは、源氏ぼたるに違いない。
ちょっと眺めていて、こっちへ来いよ、と声をかけた。
はたして、私の方へ飛んできたくれた。大きい。
残念ながら私の力量と機材は、鮮明なほたるの姿が捉えられない。
間もなく、同じ辺りから次々と湧くようにほたるが出て、私の頭を越していった。
五月闇に出てきた金の点が、尾を引いて流れる。
私に向いたり、交差したり拡がったり ・・・。