ワイングラスを割る

 

 気に入りのワイングラスを壊してしまった。

 ペアのグラスの一つは、日本酒を呑むのに使っていた。

 酒が一層旨く感じていたからだ。

 

       

        

 

   歳を加える毎に、動きが雑になっていることを感じていたが、こういうのは

  突然かにやって来る。

   ワインはともかく、失ったものは大きかった。

 

 

 数日、大事なものを無くした画像が、いつとなくと頭の中で駆け巡った。

 それが、何かをやるときに浮かんできてしまう。

 一人でじっとしている訳ではないから、時にはこれは、危険だとも思った。

    — ストレスにしてはならない ・・・。

 

 こんなのは、新しいグラスを手に入れてしまえば忘れるに違いない。

 前のより気に入るようなものを、高価でも、求めれば忘れるだろうと思っていた。                     

                            

 心という字を思い付いた。     

 悔恨も振り払い、何もなかったように暮らしていこう気持ちになりきる。

 

 この字の周りを見ていると、 虚心平気なんていう四字熟語がある。

  活字体の方が、丸い形になっているのが面白い。

 

 

 心を失った、得たという言い方をする。

 万葉集にこんな和歌があった。手に入れた方だ。内大臣藤原

   吾われはもや安見児やすみこ得たり皆人の得かてにすとふ安見児得たり

 

                 一部例え話だが意が通じないかもしれない