庭先の秋明菊がほころび始めた。
ああ、あの古刹では、どんなにか咲き誇っているだろうと思った。
誘われているようで、間もなく訪れることとなる。
秋明菊は、かつてとは違って、ひっそりと静かに咲いていた。
以前に何度か訪れた時には、この方丈(仏像や祖師像が安置される本堂の役割を担う建物)の高床から一斉に顔をのぞかせていた。
時の流れを感じた。秋明菊は、日当たりが良すぎると後退する。
野分が去った後で、飛び石を落ち葉が覆っていた。
境内の静けさの変わらなかったが、古の心は見えない。
木啄も庵はやぶらず夏木立 だ。