時間が経つ速さ


 森絵都を読んでいたら、「最後の恋プレミアム」→「最後の恋」→「最後の恋MEN'S」→「オトナの片思い」…、そして何故か、「透光の樹」(髙樹のぶ子)に至った。さらに、その作品群の中で“桜”が付く随筆集があった。(「葉桜の季節」)

イメージ 1   その中に、「卑しい目」という文章がある。
  授業中に前の席から順に手渡された一枚の男性 
  教師の写真が自分のところで止まる。それを廊
  下から見つけた教師から呼び出される。「その
  目は最初からいやらしく、明らかに性的な卑し
  さだった」と書いている。 

 原稿用紙2枚ほどの文章の終末で、次のように書いている。

   わたしは素直な少女ではなく、従って、大人というものは
  おおむね間違いだらけ、とりあえず疑って …。
   教師はフェアでなくてはならないし、人格も生徒も見る目も、清 
  潔でなくてはならないのは当然だが、生徒の人格が十人十色のよう
  に、教師だっていろいろだ。教師も人間だから良質な者も下劣な者
  もいる。という現実に、どうしたら子供たちが負けないで成長出来  
  るのだろう。

 この文章を読んだとき、こんなことは確かにあっただろうと、我が身
を振り返った。生徒が成長するに従って、教える者のもつ「個性」とい
うものが、学習成果を挙げるのにも、彼らの個性を形成するにも何らか
の効果をもたらすものと信じてきた。

  イメージ 2私は、生徒と同じように常に成長したいと考えている
 から、それより先に、過ごしてきた時間について思った。 
 「生徒や周囲の同僚に、どれ程迷惑を掛けてきたか」と
 は、 ほとんど考えていなかったのだなと。
  ただ単に、時間の心理的長さ、40歳の時には40分の一、 
 50歳の時には50分の一の速さで過ぎていたのかと。

 残された自分の時間を味わうために、自力で時の流れを遅くしよう。
   ー学び続ける。新しい場所を訪ねる。新しい人に会う。
    新しいことを始めてみる。自発的になる。
                          ー意識する。