『それは秘密の』を読んで


 森絵都から広がった読書は、短編集「恋のトビラ」から「最後の恋プレミアム」に移った。
 森絵都の見方が好きだ。『ヨハネスブルグのマフィア』の〈49年と2ヶ月間生きてきて起こらなかったことも、49年と3ヶ月目には起こり得る。起こってもいいのだ、と。〉とは、面白い。

 その隣に、私の年齢に最も近い著者乃南アサの『それは秘密の』があった。     
    イメージ 1 乃南アサ 新潮文庫の表紙

 
   台風の暴風域に突入した時、友人の見舞いの帰りの運転中に、
  トンネルで土砂崩れに遭遇する政治家。土砂に埋もれたバスから
  女性を助け出し、一晩二人で過ごす。
   顔も真っ暗で見えない。相手が誰か名前もわからない。些細な
  会話で朝と救助を待つ。暗闇の中だと素直になんでも吐き出せる。
  位置を知らせるために女性が歌を唄う。「ひみつの ・・・」 
   そんな大災害の中でも不思議なまったくの他人との、年がいも
  なく胸がどきどきする時間 ・・・。
   やがて夜は明け、救助隊のヘリで別々の方向に救助される。
   「彼女のほのかな・・・から消えそうになかった。」と閉じられる。

 文庫版58頁分の文章に、二つ付箋をつけたが、彼に倣うべきか。