遠くからだと、大きな綿菓子のようにも見えるピンクのかたまりが、やっと野にも、木々の間にも、家と家、人と人の間にも、増えてきた。
今年は梅の開花が早く、いつもなら紅梅の方が先なのだが、後になってしまって弥生の声を聞いてから満開を迎えている。
紅白が点々に、あるいはきれいなコントラストをつくっている。
梅は春の訪れとともに他の木に先がけて花を咲かせることが、その人気の第一の理由だろう。
「梅一輪 …」と開くのを待ったり、「東風吹かば 匂いおこせよ …」と咲き出したのに喜んで話しかけたりして愛でてきた。
梅は、かおりも賞されてきた。
春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる
かおりの点では、紅梅は白梅に劣っている。色の方に注意がうつっていて匂いは白梅には及ばないという。
嗅ぐかおりか、感じるかおりかを別とする
と、遠目に楽しむか、触れる程に愛でるか、
による違いだ。
紅梅の紅くれないの色をとても魅力的だ思
う。もちろん、人や時代によって変わる。
先の和歌の時代は、香りを好んでいる。
梅は花時が長い。桜までもつだろう。