紅白咲き競う梅


 遠くからだと、大きな綿菓子のようにも見えるピンクのかたまりが、やっと野にも、木々の間にも、家と家、人と人の間にも、増えてきた。

 今年は梅の開花が早く、いつもなら紅梅の方が先なのだが、後になってしまって弥生の声を聞いてから満開を迎えている。
 紅白が点々に、あるいはきれいなコントラストをつくっている。


    イメージ 1


 梅は春の訪れとともに他の木に先がけて花を咲かせることが、その人気の第一の理由だろう。
 「梅一輪 …」と開くのを待ったり、「東風吹かば 匂いおこせよ …」と咲き出したのに喜んで話しかけたりして愛でてきた。

 
 梅は、かおりも賞されてきた。

   春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる

                                       凡河内躬恒おおしこうちのみつね 古今集巻一

 かおりの点では、紅梅は白梅に劣っている。色の方に注意がうつっていて匂いは白梅には及ばないという。


  嗅ぐかおりか、感じるかおりかを別とする イメージ 2
 と、遠目に楽しむか、触れる程に愛でるか、
 による違いだ。
  紅梅の紅くれないの色をとても魅力的だ思 
 う。もちろん、人や時代によって変わる。
  先の和歌の時代は、香りを好んでいる。


 梅は花時が長い。桜までもつだろう。