春にしては冷たい雨が夜まで降った。
そして、次の日は寒い日となった。
残された休みでも、花見にはならない。腰を落ち着かせて本を読むには、いい機会なのだが。
家の中にいるのにもう一つ。香を焚いてみる。
沖縄で求めた「さがり花」香だ。
「さがり花」をイメージして作った物だろう、甘い香りが満ちた。
香を焚く行為は仏教の作法の一つ。
「お供え」であり、仏や先祖に祈る前に自らの心身を清浄にするという意味が言われている。
香炉に陶器も使ってみた。
離れた部屋で焚いた香は、空気の流れに乗って家中に拡がった。
甘くふくよかな香りは、わが心にもしみ込んだ。
平安時代貴族たちは家伝の秘法に従って練香を作り、これを披露し合う「薫物合たきものあわせ」を楽しんでいた。源氏物語の「梅枝うめがえ」に、この薫物合の情景がある。
また、十二単じゅうにひとえを広げ、立ち上る薫煙を染み込ませる「薫衣香くのえこう」も愉しんでいたようだ。
また、十二単じゅうにひとえを広げ、立ち上る薫煙を染み込ませる「薫衣香くのえこう」も愉しんでいたようだ。
枕草子の「心ときめきたるもの」。
茶道は今でも生きているから、道具や炊き方にもっと
注意すべきだ。
たゆた(と)う薫香に、小説の世界が広がった。