冷たい雨が止んだ。
それは連日、真昼から雷を伴ってやって来ていた。
葉桜になった山桜の林に行く。
気温は時季に似合わず、上がらない。
土も木々も、ひんやりとした空気の中にいる。
シラネアオイが満開だった。
やや冷たい風に揺れて、清々しい。
いや、これを目指してきたのだが、満開の顔貌を見られたのは幸運だった。
この雑木林に、近くの人たちが自然を守る活動として植えたものだ。
まわりの草木に馴染んできた。
一つ一つが色も形も自らの個性を出している。
何もない質素な環境に、華麗な青紫だ。
そして優しいだけでなく、上品でみやびかな顔をしている。