緑濃く


 桜が津軽海峡を渡ったと聞いた。

 ここらでは一日一日新緑が濃くなっている。
 ラジオからでもない。TVからでもない。唱歌の「若葉」が聞こえた。

      


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        文部省唱歌「若葉」
      作詞:松永みやを 作曲:平岡均之
      昭和17年(1942年)初等科音楽の教科書に掲載


 新緑の爽やかさとその生命力の豊かさを讃えたこの作品が、太平洋戦争の最中に生まれ、教科書に掲載されて歌われていたという。


    日本の戦局は軍部の独走により最悪の破局へと突き進んで
   敗戦を迎える。しかしどの時代にあっても、心の美しさ、生
   命の清らかさを信じる人々がいたことを告げている。

    今更、詮索はしない。

 濃くなっていく緑は、家の中から赤いつつじ越しにも見られる。


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     あらたふと青葉若葉の日の光  芭蕉
 
 芭蕉のこの句は、地名の「日光」に日の光をかけたものだ。
 今より少し夏に近づいた頃の句だ。
 桜も散りつくし、野山を蔽う緑一色の若葉の限りない濃淡の差、明暗のニュアンスを言っている。
 
 芭蕉の青葉も、戦前の若葉も、今に生きている。