やっと、ふきのとうを食べた。
この春は暖かく、早く顔を出していたが、繰り返す寒暖の寒に霜が降りて、茶色に萎
れさせられていた。
それが、ここの季節外れの暖かさですっと延び出したのだ。
春を引き寄せるために、野山を歩き回った。
ホオジロが囀り、鶯は遠慮なくホーホケキョを繰り返す。
まんさくは細く身を捩っているが、幸せに通じる黄色を目立たせている。
ふきのとうは、もっと近い家の周りにある。
耳で、舌で感じるために、ふきのとうを食べる。
早い春の、この苦みを食べると、そこから食べる美味いものが、身体に旨いと受け取
られるようになるとか ・・・。
日本酒とともに、舌にやっと春が来た。
苦みが、16度の酒にのって体中を駆け巡る。
ああ、呑み過ぎさえしなければ、きっとわが身に降りかかる魔を寄せ付けはしないだ
ろう。